ベルトコンベヤの設備診断

ベルトコンベヤの稼働状況をAEで診断しましたので、診断結果を御紹介致します。
ベルトコンベヤは低速回転の設備であり、従来から振動法などによる診断は困難でした。これに対し、AEは亀裂や摩耗により発生します。異常が進行すれば、低速回転の設備でも回転数の影響を受けることなく故障の進行を検出することができます。

ベルトコンベヤ診断結果

下記に、今回の検査対象であるベルトコンベヤで測定したAEの振幅の変化を示します。AEセンサはコンベヤの中央部の軸受の軸受箱に設置しています。AEの振幅が大きく上昇し、持続時間の長い連続的な信号が発生しています。すなわち、摩耗現象であることが推測できます。

ベルトコンベヤの蛇行

設備点検結果

設備の稼働とAEの変化を観察したところ、ベルトコンベヤが蛇行した時にAEの振幅の上昇が観察されました。蛇行により、軸受にアキシャル方向の応力が働き、軸受に異常な摩耗進行が生じてAEの振幅が上昇したと考えられます。

より詳細な評価結果を御用意しています。当社セトラのホームページ「設備診断」を御覧下さい。

チェーンの故障診断

チェーンの故障診断の依頼があり、AEによる検査を実施しましたので紹介致します。チェーンはさまざまな設備で使用されていますが、特にコンベヤーなどの低速回転設備で使用されることが多く、診断方法としては振動法がよく使用されています。しかし、振動法では損傷が大きくならないと診断ができず、また、亀裂の進展による切断などは、原理的に検出できません。これに対し、AEは亀裂や摩耗によって発生します。したがって、低速回転設備においても、回転速度に影響を受けることなく異常が進行さえすればAEは発生し、また亀裂の進行も評価できます。

診断結果

下記に、AEの診断結果を示します。下記は、軸受部にAEセンサを取り付けて、チェーンで発生するAEを、軸受を介して計測しています。下図はAEの振幅の変化を示しますが、周期的にAEが変化しています。この1周期は、チェーンの1周する周期に一致し、チェーンとスプロケットの噛み合いによって発生していると考えられます。したがって、振幅の変化はチェーンの状態を示し、振幅が大きい部分は摩耗などの損傷が進行していると考えられます。

チェーンの故障診断

設備点検結果

本検査では、対象機器の点検を実施した結果、チェーンのグリース量が少なく偏摩耗を生じていて、AEの結果と一致していました。なお、本検査対象はチェーンでしたが、もちろんベルトでも同じように評価することができます。

より詳細な評価結果を御用意しています。当社セトラのホームページの「設備診断」を御覧下さい。

ダイヤフラムポンプ故障診断

き裂や摩耗が進行する時に、AEが発生します。ダイヤフラムポンプでは、ダイヤフラム、弁、シャフトなどの部品が規則的に動作しています。したがって、各動作に対し微細でも摩耗やき裂が進行し、すなわちAEが常に発生しています。

下記に実機で計測したAEの振幅の挙動を示します。各部で生じる摩耗によりAEが発生し、規則的に繰り返されていることが分かります。部品に異常が発生すると、いつもと異なるAEが発生し、異常の進行程度によりその大きさは変化します。また、異常の進行により動作に変化が生じると、AEの発生間隔などAEの発生パターンに変化が生じます。このAEの大きさや発生タイミングの変化を評価することで、ダイヤフラムポンプの異常を診断することができます。変化の評価方法は色々ありますが、下記では標準偏差を求めています。本技術は、ジャパンマシナリーでも取り扱って頂いています。

ダイヤフラムポンプ診断

本内容に関しては、当社セトラのホームページの「基礎知識」あるいは「設備診断」をご参考にして下さい。

プレス機の駆動部のき裂評価

プレス機の駆動部は回転数が低速であることや、加工による衝撃が大きいことから、振動法等による判断は困難です。また、AEを利用しても、加工により多数のAEが発生し、単純なレベル比較では判断できません。しかし、プレス機特有の動きを利用することで診断することができます。その方法は、プレス加工は常に同じ加工が繰り返されるので、1回の加工で発生するAEのパターンは類似することを利用します。詳細は、「設備診断」に計測結果の資料があります。ご参考に

金型歯車損傷

加工1回ごとのAEの発生パターンを評価し、歯車にき裂や摩耗が進行した場合には、基本パターンに損傷進行によるAE量がプラスされることを評価する。

混合完了を評価

ハンバーグ製造工程の中の、複数の肉と調味料を混合する混合設備にて、混合の完了を評価した。均一に混合されていないと、それぞれの材料が混合器の内側をこするので、摩擦と相関のあるAEのRMSあるいはエネルギーがばらついた。均一に混合されると、この摩擦は一定になるので、AEの変動が小さくなった。AEの変動から混合完了を判断することができるので、無駄に混合する必要がなくなり、時間と電力の削減につながります。AEの摩擦との関係は「基礎知識」を御覧下さい。

ファンのき裂診断を実施

ファンのブレードのき裂の進行を評価しました。回転周期と類似した間隔で発生するAEも観察されましたが、多数は発生が不定期でした。AE検査後の非破壊検査、蛍光探傷で、き裂が検出されました。補修後にAEを計測すると、AEの発生は認められませんでした。「設備診断」もご参考にして下さい。

AEファンき裂

ロータリーポンプの軸受とローターを診断

ロータリーポンプの軸受の診断を行った。AEのエネルギーが、回転周期で変動するのが観察された。AEが回転周期で発生する原因としては、ローター、軸受、シールの損傷が考えられる。分解調査の結果、シールに通常より激しい損傷が認められた。(「設備診断」参照)計測器は、FCASを使用し、AEセンサはフィジカルアコースティクス社の60kHz共振型のPK6Iを使用した。

引き抜き加工におけるダイス傷の評価

引き抜き加工におけるダイス傷の評価を行いました。線材表面の粗さとAEのエネルギーに相関が認められました。また、その変動に、独特の特徴がありました。AEのエネルギーは摩耗量と相関があります(「基礎知識」)ダイスが荒れてダイス表面の摩擦係数が上昇し、摩耗が進行したことでAEのエネルギーが上昇したと考えられます。非破壊検査協会に論文が掲載されています。「設備診断」を御覧下さい。

引き抜き加工ダイス傷AE信号

撹拌機の軸受の焼き付きを評価

軸受の摩耗の進行によりAEのエネルギーが増加しました(「基礎知識」参照)また、AEのエネルギーのばらつきを検討するために標準偏差を検討しました。焼き付き前に、標準偏差が低下して、その後に急増する傾向が認められました。局部的な摩耗から全面摩耗に移行すると、摩耗する面積が大きくなってばらつきが小さくなると考えます。

メカニカルシールを評価

一般的に、メカニカルシールが損傷して漏洩する前には、シールする液体や気体がシールの接触面に侵入して摩擦係数を下げて、AEが小さくなります。しかし、今回の測定では、メカニカルシールの損傷が激しく、AEのエネルギーが急増しました。「設備診断」もご参考に